AQUA NEWS No.6
1998年11月発行


表紙 アコヤガイ稚貝


目     次

巻頭写真館 海を学ぶ
これまでの研究成果 優良真珠母貝の育種をめざして(栽培漁業部)
ミルクイガイの種苗生産(浅海研究所)
そこが知りたい!No.5 「アカザ」という魚をご存じですか?
ズームアップ マテガイの成長
旬の魚シリーズ イボダイ
旬の料理 アメタとオクラのもみじ和え
随想 みずみずしい心
トピックス 水の子島周辺海域のサメ捕獲調査
加工だより 健康志向食品の試作!
浜からのたより No.4 豊後灘地域
温故知新 明治の資源管理/姫野呈次郎とアワビ蕃殖保護

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巻頭写真館

海を学ぶ


調査船「豊洋」の体験航海
少年水産教室/保戸島中学校(津久見市)

カンパチのエサやり体験
見学/下堅田小学校(佐伯市)

アワビ稚貝とプラクントン観察
研修/上野小学校(弥生町)

磯の生物観察
現地指導/直川小学校(直川村)

【資料】 平成10年度夏休みの小中学生の見学・研修

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これまでの研究成果


優良真珠母貝(アコヤ貝)の育種をめざして パート2

 丈夫で死なない、大分県の漁場に適した優れたアコヤ貝を作るため、人工的に採苗・受精をさせる種苗生産に取り組んでいることは、アクアニュースNo.3(97年11月)でお知らせしました。今回は、その後の取り組みについて紹介します。
 9・10年度にセンターの餌料培養施設が整備され、10年度から本格的な人工種苗生産研究の取り組みを始めました。
ふ化後のアコヤガイ幼生には、純粋培養したパブロバ、イソクリシスなどの植物プランクトンを餌として与えます。こうして育てた幼生は20日間の浮遊期を終え、やがて付着期に入り、繊維質でできた足糸を伸ばし、しっかりと付着器にくっつきます。
 丈夫な貝を作るには、健康な親貝を使う必要があります。今回は津久見湾の天然貝、石川県産の天然採苗貝、宮崎県延岡産の天然貝、別府湾の天然貝(いずれも健康度をチェック)を取り寄せ、これらを用いて、5月下旬から6月上旬にかけて人工授精を行いました。
 20万個の稚貝を生産!
 その結果、津久見産の雌と石川県の雄、津久見の雌と延岡の雄との交配が生残率が良く、それぞれ10万個の稚貝を生産することができました。
 この稚貝は9月上旬に、臼杵市、蒲江、名護屋漁協の各漁場で試験養殖を開始しました。また、残りの一部は当センター筏で養成試験と各種の評価試験を行っています。10月上旬には平均殻長で1.0〜1.5cmに成長しています。
 これらの貝は、それぞれの漁場で育てられたのち、実際に核を入れ養殖試験を行ない、その形質を評価します。

【写真】 平均殻長1.5cmに成長した稚貝(津久見産♀×延岡産♂)

(栽培漁業部/三浦慎一)

ミルクイガイの種苗生産

 この貝は、大分県では昭和40〜50年代に姫島村、国見町、国東町地先で潜水によりポンプで海底を掘って漁獲していました。現在では資源が枯渇し、ほとんど漁獲されなくなりました。
 このため、浅海研究所ではこの貝の増養殖の種苗供給を目的に種苗生産技術研究を始めました。
 これまでの研究で、この貝の生産が可能となりました。今回はその技術の概要について紹介します。
<採卵用母貝>
この貝は、11〜2月にかけて、産卵します。県内では採卵用の母貝が得られないため、今でも資源が残っている山口県から購入しています。母貝は1〜2週間、植物プランクトンを餌として与え、水槽で大切に飼育します。
<採卵と飼育>
採卵は母貝の生殖巣を切開して人工授精する方法で行います。この方法で採卵可能であることが、これまでの研究で分かってきました。
受精卵は、翌日にはふ化し110ミクロンほどのD型幼生になって浮遊し、餌を食べ始めます。その後、1週間から10日間で底に沈み、200ミクロンほどの稚貝になり、足を出して底を這ようになります。
<稚貝の飼育>
 水槽の底に砂をしき、5ヶ月ほど稚貝を流水で飼育します。稚貝の成長は、餌の量・水量・水温によって左右されます。当研究所では、20℃の加温施設の中で飼育しています。
<中間育成>
稚貝は、翌年の4月には殻長5〜10mmに成長し、この段階で沖出しします。現在、香ヶ地、姫島、国見で稚貝をカゴに収容し、海面垂下や干潟で飼育試験を行っています。沖出し後1年で約殻長40mmに成長することが分かってきました。
しかしながら、沖だしの大きさやタイミング、収容密度などまだまだ課題が多く、養成方法の研究をこれからも進めていく計画です。

【資料】 ミルクイガイの生態

【写真】 約1年で殻長4pに成長したミルクイガイ

(浅海研究所/黒川彩子)

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シリーズ/そこが知りたい! No.5

「アカザ」という魚をご存じですか?

 この魚は淡水魚で、山育ちの方は子供の頃に用水路や小川といった場所で見かけたことがあるかも知れません。元来、九州では生息数が少なくあまり見かけない魚で、大分県内では山国川、駅館川、桂川、大分川、三隈川等の県北地域の河川に生息が確認されています。大分川を南限として県南地域には生息していないとされています。
 地方名であかじん・あかなまず・ててぐろ・じんぐろ等と称され、戦時中は山間部において貴重な蛋白源になっていたようです。漁法はガチンコ漁と呼ばれる礫下の魚を上から礫ごと叩き、失神させて捕らえる方法が主に用いていたようです。
 アカザは水のきれいな上、中流域の大礫が点在する平瀬もしくは早瀬に生息し、礫の間を縫うように遊泳します。卵は礫下に産みつけられ、雄が卵を保護するといわれています。
 環境庁が1991年に報告したレッドデータブックによると、九州産のアカザは地域個体群として地域的に絶滅の危険性があるとされています。大分県でもこのような絶滅が危惧される種は、レッドデータブックに載っているだけでも下表に示したように数種あり、意外と私達のごく身近な所で細々と生息しているかも知れません。
 これら希少魚は河川改修や水質汚濁、乱獲、外来魚の侵入等によりその数を減らしており、地域文化的な意味において生物相の豊かさを維持することは大切なことだと感じています。これら希少種の生息分布を把握する上で皆さんからの情報は大変貴重です。「変な魚が獲れた。これは何ちゅう魚じゃろうか?」といった情報でもかまいません。内水面研究所までぜひお知らせください。皆さんからの連絡をお待ちしています。 

【資料】 大分県内で絶滅の恐れのある汽水・淡水性魚類

【写真】 アカザ

(内水面研究所/徳光俊二)

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 ズームアップ 

マテガイの成長 だんだん細長くなる

 浅海研究所では、平成3年に日本ではじめてマテガイの種苗生産に成功しました。
 浮遊期を終えてた付着稚貝は、アサリなどの二枚貝と同じ丸っぽい形をしています。ところが、成長するにつれて、だんだんと細長くなっていきます。
 写真は平成10年7月に採卵し、付着稚貝になって20日経過したものです。すでに成長差がでています。写真2の稚貝は、写真1に比べ体の長さと幅の比率が異なり、細長くなってきました。

写真1

殻長=1.0mm
殻幅=0.75mm
殻長:殻幅=1:0.75
写真2

殻長=2.7mm
殻幅=0.85mm
殻長:殻幅=1:0.31

写真の拡大はこちらへ 写真1 写真2

(浅海研究所/黒川彩子)

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旬の魚シリーズ

イボダイ

 この魚は大分県では、アメタ、シスと呼ばれ、大衆魚として親しまれています。
 夏から秋にかけて、主に瀬戸内海側で小型底びき網や刺網で漁獲されます。
  漁獲量全国第一位!
 大分県における過去15ヶ年のイボダイの漁獲量を図1に示しました。'96年の本県の漁獲量は799トンで全国第1位となっています。全国の漁獲量の実に23%が大分県で漁獲されています。漁獲金額は約4億6千万円です。
  一尾50円?
 ’97年の大分市中央卸売市場での県産イボダイの月別取扱量と平均単価を図2に示しました。取扱量は7月から急激に増加し、11月までは10トン以上が取り扱われています。平均単価は逆に急激に減少し、安価で取り引きされています。この魚の大きさは100g程度ですので、盛漁期の一尾当たりの卸値は50円程度でしょう。
 大分県ではなじみの魚であるに、この魚の生態や資源の状態について、ほとんど調査がされていないのは不思議な気がします。

【資料】 イボダイの生態/クラゲを食べる?

【図1】 大分県におけるイボダイ漁獲量の推移

図2】 イボダイの月別取扱量と平均単価

(企画管理部/阿南宏重)

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 広げよう暮らしに魚を!・・・旬の魚料理

アメタとオクラのもみじ和え(刺身風)

作り方

@  アメタは3枚におろし、腹骨をすき取る
A  皮をはぎ、塩少々ふりカボス汁をふる
   (10分おく)
B  Aの水気をふき、細作りする
C  オクラは塩みがきして、熱湯にさっと入れ、
 冷水にとりタテ4〜6つ切りする。
D  大根はすりおろし水気をきり、みじん唐辛子
 と混ぜる。
E  BCをDのもみじおろしで和え、カボス醤油
 でいただく。
材料(4人分)

*アメタ    2匹
*オクラ    8本
*大根    100g
*赤唐辛子  1本
*かぼす   1コ
*醤油     少々

(提供:県漁連指導部/小野サチ子)

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随 想

みずみずしい心    企画管理部長 多田羅信彦

 大分市から上浦町まで、片道54kmの道を1時間半ほどかけてマイカー通勤している。センターの近くには、津井公園があり道中は格好の散歩道である。早く出勤した時は、できるだけ散歩をするようにしている。
 公園内には星空観察ができる天体望遠鏡や、海底観察のできる天海展望台がある。
ここからの眺望は絶景である。展望台に登ると、遠くに広がる海から天に連なる天海が眼前に広がる。その光景を見ていると、なんとも言えない開放感をおぼえる。
散歩の時間はわずか20分ほどで、体を動かすという面からはあまり効果はないと思うが、メンタルな面からは大切な時間だと思っている。
人間、日常の環境に慣れてしまうと、その環境の良さに、つい、気付かなくなってしまいがちになる。
立ち上がる時、思わず「ドッコイショ」と掛け声をかけてしまう自分に気付き、歳をとったなと思うこともある。日常生活に流されて、つい無感動になってしまうが、景色を見て感動する心を持っていたことに気付き、自分もまだ捨てたものではないと言い聞かせるこの頃である。
 歳をとることは、人間誰でも避けがたいことであるが、ものごとに感動するみずみずしい心はいつまでも持ち続けたいものである。

天海展望台

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トピックス

水の子島周辺海域のサメ捕獲調査

 毎年、豊後水道・水の子島周辺の瀬にサメが来遊し、イサキ等の魚を食い荒らしたり、追いかけ回したりするため、まったく漁にならないと地元漁業者から苦情の声が上がっています。このため、豊後水道一本釣り協議会から、サメの種類、生態、駆除対策等の調査の依頼がありました。
これを受けて、平成10年9月10日に調査船「豊洋」を使って、延縄によるサメ捕獲調査を行いました。
 調査は、鶴見町大島の漁業者2名、担当普及員1名、センター研究員2名、それに「豊洋」乗組員があたりました
漁業者と操業するポイント等を相談しながら、30pサイズの生きたイサキを餌に、水の子島隣辺の中瀬付近の漁場にて1000m(針数30本)延えました。
 釣獲成果は、サメ1尾(体長105p)、クエ1尾(体長110p)、ウツボ2尾でした。サメは船上に引き上げるのに苦労しましたが、何とかフックを使って引きずり上げることができました。即殺するためサメの頭部を木製の大型ハンマーで叩いたり、暴れないよう頭部先端を切り落としたりしました。
計測を済ませ、分類や食性をみるため頭部と胃を採取したあと、サメを切り刻んで海中に投棄しました。これは、サメを周辺海域から排除するため伝統的に行われている「切り込み」と称されています。「サメは仲間の臭いを嫌う習性があるので、サメ退治にはこの方法がいい」と地元漁業者は話しています。
 このサメは同定の結果、メジロザメ科ドタブカであると推定されました。

(海洋資源利用部/木村聡一郎:文、高田淳史:写真)

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加工だより 健康志向食品の試作!

 朝、夕めっきり涼しくなりましたが、今年の夏は毎日暑い日が続きましたね。大分地方気象台によると、今年の八月は観測史上二番目の厳しい暑さとか。体がだるい、疲れる、食欲不振などの症状を訴えた人が多かったのもうなずけます。
 連日連夜の熱帯夜続きで、夏ばてした大方の人は、頼りになるのは「自分の健康だけ」と言う思いを強くしたことでしょう。そのようなあなたに、水産加工指導施設が取組んでいる『健康志向食品』についての話題を提供いたしましょう。
全漁連の魚食普及ソング「おさかな天国」・「おさかなパワー」によると『魚を食べると頭がよくなる、体によい、悪いコレステロールをやっつける、体に足りないカルシウムはお魚で』と宣伝していますが、皆様方は魚に多くの有用・有効成分が含まれていることをご存じでしたか。
 最近、魚介類には脳の働きを良くするDHA(ドコサヘキサエン酸)、血の流れをよくして動脈硬化、脳血栓を防ぐ働きのあるEPA(エイコサペンタエン酸)や、タウリン・ビタミン類を多く含む良質なタンパク質、骨を強くし精神安定効果のあるカルシウムなどが多く含まれていることが分り、魚は健康食品の筆頭株として注目されています。
 このようなことから当センターの水産加工指導施設では、内臓を除いた魚のすべて(魚肉、頭、背骨、小骨、尾ビレまで)を丸ごと利用し、EPA、DHA、カルシウムや微量栄養成分を多量に含む『健康志向食品』の開発にチャレンジしています。
 ペースト化した素材で安全、簡単、おいしさ志向を満たすテリーヌ、ムース風のレトルト食品を考えていますので、ご期待ください。

【写真】 マスコロイダー

【写真】 高圧高温調理殺菌機

(海洋資源利用部/安部和智)

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浜からの便り No.4

豊後灘地域

くにさき銀たち   「くにさき銀たち」としてすっかり定着したタチウオ。今年は、昨年の不漁を引きずり極端な不漁で始まりました。6月に、小ぶりの「銀たち」くんが水揚げされ始め、浜は久しぶりに賑わいました。7月に入り、魚体も大きくなり昨年を上回る水揚げがありました。
価格も文句無しで、浜は恵比寿顔でいっぱい!。ところが盆明けから、価格が下がり始め、漁師はみんな渋い顔。
 そこは漁師の心意気!8月19日の夜、国東町納涼盆踊り大会が行われました。町内から趣向をこらした41チームが参加。千人を越える老若男女が町営グランドで、幾重もの輪になり夏の夜の踊りに興じました。
 その中で、ひときわ目を引いたのが、「くにさき銀たち」の昇り旗を先頭に、三十尾の特大タチウオに仮装した女性たち。漁村パワーを爆発させ、「太刀魚の舞」を華麗に舞いました。その勇姿は観衆を魅了し、その興奮は両子山まで揺らしたということです。
三十尾のタチウオ華麗な舞
 国東半島のタコ壺漁は、6月から始まりました。昨年に続き豊漁で、8月まで200トンを越えました。
 7月最盛期では、一日7〜8トンの水揚げがありました。港はタコで埋まり、タコの吐息(ブシュウー)があちこちから聞こえてきます。
 しかし、餌となる親磯ガニが海岸に見あたらず、子磯ガニが親を捜して磯辺をウロウロ。漁業者は親磯ガニを求めて、県下各地の海岸に出没しているという。
 姫島村では、名物の干しタコ作りが盛んに行われています。干されたタコが浜風に吹かれ、良いあんばいに乾き、酒の肴になる日を足を長くしてあなたを待っています。
人は、「明石のタコよりおいしい国東タコ」というが 本当でした。
 タコピラフ タコ飯 タコステーキ 干しタコ タコの唐揚げ タコ刺し 湯がきタコ タコおでん その他色々 あーア うまかった! うまかった!
タコ漁最盛期!

 干しダコのある風景、後方は
 矢筈岳267m (姫島村)
撮影:平川千修

(国東地方振興水産課/富高郁朗)

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温故知新 明治の玉手箱

姫野呈次郎とアワビ蕃殖保護

 大分県北海部郡関村(現:佐賀関町)の漁業者姫野呈次郎は、佐賀関における鮑(アワビ)の蕃殖保護について、1886〜1891年(明治19〜24年)の間、三回にわたり大日本水産会報に投稿しています1)2)3)4)
 関村は江戸時代、肥後国(熊本)細川藩が浦奉行を置き領有していました6)。この時代、諸国の大名は自国の特産品を幕府に献上する慣習があったようです。細川藩は干鮑や鯣(スルメ)を献上していました5)6)
 また、干鮑は幕府の重要な輸出品でもあり、このため関村のアワビは藩により厳重な取り締まりが行われていました6)
 関村の総代、六代目姫野嘉右衛門は、藩から宝暦八年(1758)に鮑仕立方請負を命ぜられています6)。その後、姫野家は移植放流、繁殖期の休業、他村からの入船の禁止等に代々力を尽くしてきました1)6)

呈次郎の取り組み

 明治維新により、藩の取り締まりは無効となり、乱獲・酷捕によりアワビは減産し、二漁場を喪失するほどでした。そこで十代目姫野呈次郎はアワビ資源の回復のため以下の方策を行いました。

佐賀関鮑捕獲同盟規約1)6)9)

 1 明治17年に、関村と白木村との間で、アワビについての佐賀関鮑捕獲同盟規約を結んでいます。以下がその内容です。
 @ 毎年陰暦正月から9月25日までを漁期とし、10〜12月は休漁とする。
  A 2寸(約6cm)以下の稚貝の採捕禁止
   @Aに違反したものは、罰金や鑑札の休止等の処罰を明記した。
 B 関村下浦港内蛭子ヶ鼻の暗礁(東西75m×南北45m、距岸25m)を蕃殖場(禁漁区)とする。
 C 規格外のアワビはこの蕃殖場に放流する。
 2 この規約に基づいて、その実行がなされました。
 @ 明治17年9月から同19年5月の間、総計1,748個体の規格外のアワビを蕃殖場に放流した。
  A 明治22年3月12日に、蕃殖場で採捕調査が行われた。その結果、放流個体の37.5 %が回収され、放流重    量の約4倍の重量であった。放流個体は30g以下であり、採捕時の平均重量は300g、放流から3〜5年で10    倍以上の成長を示した。
 3 明治12年(1879)〜同23年(1890)のアワビの漁獲記録が残されている。
   規制によって、アワビの漁獲量は平均で規制前より1.5倍増加した(図参照)。
   以上が呈次郎が大日本水産会報に投稿したアワビ蕃殖保護の取り組みのあらましです。
   (大日本水産会の設立(1882年;明治15年)5)

甦った呈次郎

 この報告は、投稿後100年間ほとんど知られることなく、会報に眠ったままになっていましたが、東京水産大学の野中忠教授(当時)により、原報告の内容とその意義が紹介されました1)
 こうして、姫野呈次郎は100年の眠りからやっと覚めることになりました。
 呈次郎が中心的になって行われた佐賀関におけるアワビの資源管理やその漁獲量は、その後どうゆう変遷をたどったかははっきりしませんが、ここ9年の同町のアワビ漁獲量は10トン未満で推移しています7)(図参照)。
 「資源管理、資源管理」という言葉だけがややもすると先行しがちな昨今にあって、人工種苗放流の手段を持たなかった明治の資源管理の実践について、今一度、心を温めてみたいと思っています。
 資料収集については、佐賀関町産業課日高俊次氏に協力を得ましたので謝意を表します。

【資料】 姫野呈次郎

【図】 鮑の蕃殖・放流実施状況(江戸・明治)

【図】 佐賀関におけるアワビ漁獲量の変化

【写真】 明治30年代後半の佐賀関町下浦の風景

【写真】 明治30年代後半、関村にあった水産試験場

参考資料
 1) 野中 忠(1990):忘れられたアワビ漁業管理の一事例,さいばい(54),27-29. 日本栽培漁業協会月刊誌
 2) 姫野呈次郎(1886):下浦港内鮑蕃殖場,大日本水産会報,(54),42-43.
 3) 姫野呈次郎(1889):大分県下佐賀関鮑蕃殖の景況,大日本水産会報,(86),349−350
 4) 姫野呈次郎(1891):鮑捕獲規約の実行,大日本水産会報,(107),174-176
 5) 片山房吉(1937):大日本水産史,126,888
 6) 佐賀関町(1970):佐賀関町史,264-269 455-464
 7) 大分農林水産統計協会(1989〜1997):沿岸漁業等動向報告書
 8) 佐賀関町役場(1998):姫野呈次郎にかかわる戸籍謄本
 9) 佐賀関町漁業協同組合所蔵;佐賀関鮑捕獲同盟規約書

(企画管理部/阿南宏重)


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